2016年5月25日水曜日

小沢村から愛を込めて〜第5回〜

「余白は無ではなく手抜きでもない、有と同等の意味を持つ」

 
ある西洋のミュージシャンがインタビューでこう答えました。
「日本語で一番好きな言葉は『間』だよ。西洋にはないニュアンスだね。」と。
今回は「間(ま)」についてのお話です。

もちろん西洋でも物と物との間という意味の言葉はありますが日本人が使う「間(ま)」とはちょっと違うと思います。
そしてこれから書く内容はあくまで私が個人的に感じ、調べ(受け売り含む)た「間」についてであることをご了承ください。


職業柄「間」という言葉には以前から気をつけ、また重要だと考えていました。

間って日常生活で使う?

間が悪い
間延びする
間に合う

などなどいくつか聞いたことはあると思います。

日本古来から言葉と言葉の間、動きと動きの間の余白の部分に感情を込めたり、または読み取り「趣がある」とする文化があります。
(起源については民族性などいくつか説はありますが話がデカくなりすぎるのでここではやめておきます。)

伝統芸能の世界、歌舞伎を始め能や落語や俳句、茶道などなどもちろん阿波踊りもそうですが間を重んじます。
「隙間をあえて埋めない美学」とでも言いましょうか。
少し厄介でわかりにくいのは間とは明確な定義がなくはっきりとこれ!と説明できないものであると思います。


例えば日本画の話。
ポツンと月と竹が描かれていてあとは真っ白、つまり余白です。
でもこの白い部分は手抜きで描いてなくて白いわけではないんです。
その余白を「雪」だと想像することによって(作者の意図と同じかどうかは別として)自分なりに想像して楽しむことができますよね?
この余白(間)を感じることができるのが日本文化の素敵なところだと思います。


自分は普段後輩に基礎練習を教える時は「裏(拍)を意識しろ」としつこいくらい言っています。
つまり叩いて鳴っている表(拍)と同じくらい鳴っていない裏拍(間)を意識するかしないかは演奏にも大きな違いがでてきます。

「間」と同じく重要なのは「ニュアンス」ですね。


阿波踊りでの吉野川の演奏で「ドンガドン」と呼ばれる叩き方があります。
メトロノームに忠実に叩くと
 
ドンガドン ドンガドン
 
です。
文字にすると伝わりにくいですが

ドンガドンタッタ ドンガドンタッタ

と、少しの「タメ」と微妙な強弱を加えることによって表情豊かで膨らみのあるドンガドンが出来上がるわけです。
このニュアンスが聴いた人、観た人に時には「粋だねぇ」「味わいがある」という感情を抱かせるわけですね。

結局「間」とは何?と問われれば正直明確な答えは出てませんが今のとこはタイトルにあるように「余白は無ではなく手抜きでもない、有と同等の意味を持つ、それが『間』。」です。


演奏する側は間を意識して、聴く(観る)側はその行間を読み取れればより一層楽しめるのではないかと思います。

2016年5月18日水曜日

見学、そしてついに東京新のんき連に入連!

連載「僕が東京新のんき連に入ったわけ」では、男踊りのにっしゃんが東京新のんき連に入った経緯について書いています。本連載が、阿波踊り連に参加してみたいけど、どう入ったらよいか分からないと感じている人の後押しになれば幸いです。

連載4回「日本へ帰国!そして入連先を探し始める」では、2014年10月にサンフランシスコへの転勤が終わって帰国した際に日本で阿波踊りを続けようと決意し、入連先を探し始めるにあたって、入連先を選ぶ基準を決めるところまで書きました。今回は実際に見学し、入連するところまでを紹介したいと思います。

希望に合う連は見つかるか?不安な面持ちで見学申し込みを行う


高円寺のお祭りは1回だけ観客として見に行き、もう1回はボランティアとして参加したことがあったものの、この時まだ、具体的な連と個人的な交流があったわけではなく、どこの連に入るか見当もつかない状態でした。そこで第3回で紹介した通り、入連先を選ぶ基準は自分なりに決め、高円寺阿波おどり連協会所属連から希望に合いそうな連を探し、見学させていただきながら入連先を決めることにしました。本当に希望と合う連が見つかるか不安な面持ちで各連のWebサイトから見学の申し込み先を見つけてコンタクトを取りました。

  1. 男踊りを希望していたので、男踊りの連員を募集しているかどうか?
    • 連によっては募集を閉めきっている場合もあります。
  2. 活発に活動しているか?
    • 練習や出演の回数は連によって大きく違います。
  3. 踊り、お囃子、衣装のスタイルが好みに合うかどうか?
    • 個人的にはオーソドックスの踊りを大事にしつつも、男踊りが躍動的な踊りをする連がいいなと思いました。YouTubeでいろんな動画をあさってチェックしました。
  4. 連員がおおよそ自分と同世代か?
    • 同世代の方が多い方が馴染みやすいと思いました。
  5. その連が徳島の阿波踊りに出演しているかどうか?
    • お盆の際に帰省し、徳島市の演舞場で踊ることが自分にとっての大きな目標でした。
    • 高円寺の連は徳島の連と姉妹連となり、徳島の連に合流する形で徳島のお祭りに出演しているケースが一般的のようでした。

ハラハラドキドキでいざ見学!まずは練習環境の充実さに驚く


見学で訪問した座・高円寺の概観(サイトより引用)
コンタクトが取れた連から練習日程を聞いて、主に週末に見学させていただきました。

小学校の体育館などで練習していると想定していましたが、まず見学で訪問したのは、舞台芸術やワークショップが頻繁に開催されている「座・高円寺」。高円寺の阿波踊り関係者であればおなじみの場所です。

第一印象は、「あ~すごい広くて綺麗で良い場所で練習しているな~」「え~舞台とかやっている場所で練習するの?すごい」という印象でした。

サンフランシスコで所属していた連では、連のスポンサーもされている日系居酒屋さんのオーナがご好意でお店の2階を提供して下さっていたので良かったものの、市内に公的施設が少ない点や賃料の高騰の影響もあって、練習場所の確保に困っている音楽やダンス系のコミュニティの話を見聞きしました。このような事情を垣間見てきた直後だったこともあり、充実した練習環境を見たことで、俄然、連に参加して阿波踊りをやってみたい!と意欲が湧きました。

セシオン杉並もよく練習で使われています(サイトより引用)

大人数の生お囃子つき練習に感激する


次に驚いたことは、大人数の生お囃子つきで練習されていること。

サンフランシスコで所属していた連では、大太鼓と締太鼓は連長が2つずつ所有しており、連員が踊り子とお囃子の役割を両方かねて交代で練習していましたが、篠笛や三味線の演者が少なく、練習では通常、CDをかけて練習することが多くありました。楽器の調達も難しいですが、さらに演奏者を見つけたり、育成することが非常に難しく、本番では、市内にある別の笛や三味線のコミュニティから演奏者を派遣していただくことが多かったです。

一方で、高円寺阿波おどり連協会所属連では、練習のときからほぼお囃子が十数人いたり、楽器もフルセットでそろった状態で、生お囃子つきで練習されていたので、さすが日本、そして高円寺と思いました。お祭りはこれまで何度と見てきたものの、あらためて阿波踊りのホームグラウンドはやはりすごいなと感激しました。

新のんき連の練習を見学し、ついに入連を決意する


いくつかの連を見学させていただき、実際に入連先を選ぶとなると非常に悩みました。
どの連もさすが協会に所属しているだけあり、まじかに見る踊り子さん達の技量もすごく、キレのある動きに感激しました。そしてその動きを支えるための筋肉質な体をされている方が多くいらっしゃることも印象に残りました。練習内容も事前に綿密に組まれており、テキパキと練習されているところばかりでした。見学の際は、非常に緊張して赴いて、多少顔が引きつってたと思いますが、皆さん笑顔で対応してくださったのを覚えています。

どこの連に入っても充実した阿波踊り生活を楽しめそうな確信はありましたが、最終的に東京新のんき連に入連することを決意しました。年中通して活発に活動している点、若い人が多くて活気がある点、男踊りや衣装が好みに合っていた点、徳島市の阿波踊りに参加している点、など自分が希望した点はそろっていることに加え、
  • 連員同士が非常に仲良さそうで入ると楽しめそうだと具体的にイメージできたこと、
  • 見学の際に練習時間中ずっと連員一人が見学者に付き添い、足の動かし方など基本の所作を熱心に指導してくれたこと、
  • 連長が連の方針を資料を見ながら説明してくれたこと
などが非常に安心感があり、最後の後押しとなり、入連を決意しました。

入連届けを出したのが2015年12月。もう年末ということで、年明けから本格的に練習に参加することになりました。

(つづく)

2016年5月11日水曜日

連員インタビュー!男踊り編

こんにちは!みっしーです。
私のブログ更新も3回目となりました。
「ここが好きだよ!東京新のんき連」、今回からは広報部を飛び越えて、簡単にではありますが、連員に話を伺ってみたいと思います♪

そもそも私が入連したときに、「皆どんなきっかけで阿波踊りを始めたんだろう?数ある連の中で、東京新のんき連に入ったのはなぜだろう?」と気になっていたこともあり、この機会にきちんと話を伺ってみようと思ったのでした。

第一回の今回は、徳島出身で徳島の新のんき連に所属をしていたハコさんにお話を伺いました。
ハコさんは上京してからも毎年夏は徳島に帰って新のんき連で踊っていたそうです。

-ハコさんは阿波踊りの本場徳島の出身ですが、東京新のんき連に入連するきっかけは何だったんですか?

「東京出てくるときに一度阿波踊りは諦めたんやけど、やっぱり諦めきれず…
高円寺で阿波踊りをもう一度始めようと思った。3年くらいかけていろんな連を見たよ。」

-3年がかりって凄いですね!?

「3年間毎年徳島で連長夫妻と会うって感じかな。その間高円寺にも通っていたけど、
なかなか入連を決めるまでは至らず、どうしよっかなーって感じやった。
そんな中、連長夫妻から何年か越しに東京で連を発足させるって話を聞いて。」

(※連長夫妻が東京新のんき連を発足させるまでの経緯については、是非連長コラム「花火」をご覧ください♪)

-高円寺で阿波踊りを始めるために時間をかけて検討していった先に、連長夫妻との縁があったんですね。

「私も高円寺で腰据えてやりたかったし、しかも徳島で所属しとったあの新のんきの看板を背負ってやるって言うから、なんの迷いもない!ってことで入連に至りました!」

-そうだったんですね!東京新のんき連は今期で7年目に突入していますが、発足当時から見ていたハコさんにとって、東京新のんき連の魅力ってどんなところだと思いますか?

「魅力…。みんなが1つの高いレベル、目標に向かって真剣に取り組む姿勢と真面目さ。」

-確かに私も、初めて練習見学に来たときに大人も子供も真剣に練習に取り組む姿に感動しました。

「あと、いい意味でアホな人達、ってところかな(笑)」

-真面目とアホを両立させてるところ、ってことですね!(笑)

-最後に、東京新のんき連がこうなりたいという願望を教えてください!

「誰もが認める有名な歴史のある連にしたい!」

-ついていきます!ありがとうございました。


男踊りハコさんでした♪
もっともっと語りだしたら長くなる、との前置きがあったので、今度飲みの席ででももっとがっつり熱い想いを語っていただこうと思います。

次回はどんなお話が聞けるのでしょうか?
お楽しみに!


2016年5月4日水曜日

鳴らす阿呆へまっしぐら 〜大太鼓〜

こんにちは。三味線のちづるです。
鳴らす阿呆へまっしぐら』連載の第3回目。
なんだか前回の投稿からすごく時間がたってしまいました。
申し訳ありません(^ ^;)
連載といっても内容は独立してますので、安心してお読みくださいね♪


今日のお題


さてさて私の前回の連載では、『鉦』についてお話させていただきました。
今回のお題は『大太鼓』!

阿波おどりでもっとも目に止まる鳴り物ではないでしょうか?
そう。流し踊りの最後尾で迫力のある重低音を響かせているあの楽器です(^ ^)
この日は雨のためビニールを装着してますね

読んで字のごとく、大きい太鼓ですね!
大太鼓担当の鳴り物メンバーは皆さん体格がいいのであまり伝わらないかもしれませんが、私が大太鼓を持つと真っ直ぐ歩くのも難しいくらいです。

流し踊りでは「高張り→ちびっこ→女踊り→男踊り→鳴り物」という順番で流します。
鳴り物は「三味線→笛→鉦→締太鼓→大太鼓」という順番になってますので、大太鼓は本当に一番後ろから踊り全体を支えている重要な楽器です。


ちなみに、大太鼓は『おおど』とも呼ばれますが、『おおど』は『大胴(おおどう)』からきています。
大胴とはサイズの大きな和太鼓(長胴太鼓)のことですが、現在では大太鼓の通称として阿波おどりでも使われているようです。

ではそんな大太鼓、詳しく見ていきましょう。


材質


まずは大太鼓の材質から。

胴・・松、けやきなど
皮・・牛皮
鋲・・鉄
バチ・・桜、楓、樫、檜など

大太鼓は丸太をくり抜いて作られた胴に皮を張って鋲で留めれば完成です。
と、簡単に言ってしまいましたが、一つ一つの行程には大変手間と時間がかかり、完成品は芸術作品と言っていいくらい美しいです。
でも、上の画像のように長年使用し胴も皮も良い具合になじんでいるのもまた美しいですね。

もちろん、このように美しくなじんだ太鼓にするためには定期的なメンテナンスが必要になります。
皮の張り替えなどは専門の方にお願いしますが、小さなメンテナンスは自分たちでやります。

連名と皮フチ部分をしっかり保護しニスを塗ったり

命の次に大事な連名の塗料が剥離した箇所を塗り直したり

ヒビなどをパテで保護したり

手がかかる子ほど可愛いと言いますが、やはりこうやって自分でメンテナンスすることで、さらに自分の楽器への愛着が増すそうですよ。


サイズ


さて次は気になる大太鼓のサイズについて。
現在東京新のんき連にある大太鼓は、2尺7寸と2尺8寸の2サイズあります。
これはどういうことかというと、胴径(皮の部分の直径)が2尺で、胴の幅が7寸/8寸ということです。
あんまりピンときませんね。

では実際の大太鼓で比べてみましょう。



幅22〜25cm、高さ60cmということですね。
ちなみに大太鼓の重量は、7寸で約7kg、8寸で約10kgとなります。

大きさもさることながら、なかなかの重さ・・。
これを叩きながら歩くなんてすごいです。

叩き方・スタイル


ではでは、続いて大太鼓がどんなフレーズを叩いているのか説明してみます。

前回、東京新のんき連の鉦のリズムを書きましたが、その鉦のリズムにあわせて同じように大太鼓のフレーズも音符で書いてみましょう。
※ちょっと前回と書き方を変えています。
これが東京新のんき連の鉦と大太鼓のぞめきのフレーズです。

ふふ。
よくわかりませんよね(笑)
これを口で言うとしたら『ドットコトンコドンコドンコ』となるそうです。
・・余計わかりませんね(>▽<)


ちなみに連長コラムで、新のんきの『独特の連打』という表現をされていましたので、どのように独特なのか、阿波踊りでよく耳にする大太鼓のフレーズと比較してみましょう。

こちらが皆さんがよく耳にする大太鼓のフレーズです。
(もちろん東京新のんき連でもぞめき以外のお囃子ではこのフレーズも叩きます)
かなり違いますね(@o@)
口で言うとしたら『ンドンガドンドンコ』な感じでしょうか。
とても阿波踊りらしい、雰囲気のあるフレーズです。


連長がコラムの中でおっしゃってたように、新のんきの「独特の連打」で音を合わせるためには、大変な練習が必要なようでして、大太鼓チームは常に厳しい基礎練習をやっています。

そんな大太鼓チームの特徴は、鳴り物の中でもっとも「練習への出席率が高い」ということと、休憩時間でも大太鼓チームで固まっていて「みんな仲良し」ということでしょうか。
きっとまとまりのある音を響かせるために、常日頃から一緒にいるようにしているのでしょうね(笑)



観どころ・聴きどころ


では最後に、そんな大太鼓の観どころ・聴きどころは
「心躍る重低音」
大太鼓の素晴らしい所は耳だけではなく体全体で感じることができるという所です。
特に流し踊りでの大太鼓は胸(というか内臓?)に響き、否応なしに気分が高揚します。

そしてさらに、
「心揺さぶる静の音」
舞台踊りにおいて大太鼓は、流し踊りとは正反対の「静」と、激しく場面を盛り上げる「動」を使い分けることがとても重要になります。
大太鼓はもともとの音量が大きいだけに「静」を表現することは非常に難しいのですが、静かな大太鼓は鳴り物を支える根っこであり、お囃子に深みを与えてくれる存在なのです。

迫力のある重低音と大河のような静けさ、これが大太鼓の真骨頂だと私は思います。
舞台では是非、柔らかな大太鼓の音色も楽しんでくださいね♪



次回予告


では次回
鳴らす阿呆へまっしぐら -締太鼓-
締太鼓について書くのもかなりの苦戦が予想されますが(笑)、がんばりますのでのんびりお待ちください☆