2016年3月16日水曜日

飛び出せ!世界の "AWAODORI" 第2回 〜 シカゴ美湖連 〜

連載「飛び出せ!世界の "AWAODORI"」では、海外の阿波踊り連を紹介しています。第1回のサンフランシスコ阿波っ子連に続く、第2回で紹介するのは北米シカゴを拠点に活動する「美湖連」さんです。

美湖連さんは、2015年に設立された若い連ですが、地元のアメリカの方も大勢参加され、FacebookページYoutube を積極的に更新。シカゴでも阿波踊りを通じて日本文化のファンが増えるよう活発に活動されています。

本記事では、美湖連の前身である「阿波踊りシカゴ」※を2015年7月に設立された田付篤慶さんに伺ったお話を紹介いたします。

※ 阿波踊りシカゴは元々1回のみのイベント出演を目的に結成されたが、阿波踊りを愛して集まった有志たちの要望によりその後も練習を続けながら様々な地域イベントに参加。2015 年 12 月には「美湖連」(ミシガン湖に面したシカゴをイメージ)という正式連名がつけられオリジナル衣装も制作、独自に活動を開始した。


Q. いつ頃、どのような経緯で設立されたのでしょうか?


シカゴ 日系食料品店内を練り歩き
(田付さん)2015年の2月、同年7月にアーリントン競馬場で開催予定の Japan Day というお祭りの主催者からイベント企画の提案を依頼されました。

私がシカゴに 20 年以上に住んでおり、映像やイベント系のコーディネーションをした経験がございましたので、それを耳になさった主催者側から打診があったとい う経緯です。

日本から来てくれる J-POP アーティストとコスプレ・イベントの他に何かエンターテイメント性が高く、観客参加型のプランを企画して欲しいとの事でした。観客参加型という事から、ダンスにすることはすぐに決まったのですが、アーリントン競馬場を下見してみると、敷地は大蛇のように横に長く、盆踊りのような櫓の周りを周回するようなダンスは場所が取れない事が分かりました。

Japan Day での踊りは地元の競馬ファンにも好評
そこで思いついたのが私の両親が移り住んだ徳島県の阿波踊りでした。奇しくも同じタイミングで高円寺の連で踊り子をしておられた女性が彼女の連をシカゴに呼べないかという事で Japan Day の主催者に打診していたという偶然も重なり、その方と、もう一人の徳島出身の方にインストラクターになって頂くお願いをして立ち上げることになりました。

Q. 参加者をどうやって集めましたか?


食料品店での盆踊りに参加
(田付さん)Japan Dayの主催者にはシカゴの日系非営利団体や日本商工会議所などが名前を連ねておられましたので、そのチャンネルを使って最初は募集しました。

当初はかなり苦戦し、レッスンの参加者はインストラクターさんと私だけという事が何度かありました。それが、一人、また一人と興味を持ってくださった方々が増えて発足から一か月後には 15 人位にお集まり頂けるようになりました。

その後は一か月に多い時は 10 回以上のレッスンを各所で行い、気づいた時には一度でもレッスンに参加してくださった方の数が 130 人を越え、郊外のメインレッスン場では常時 30 人以上の方がお越しくださるようになりました。

あとは、各所のイベントに呼んで頂いて稚拙ながらも踊りを披露したり、日系食料品店の中をフラッシュモブ的(事前に許可は得ていますが)に練り歩いたりしたおかげで少しづつ参加者が増えていきました。

Q. 地元の人達の反応はどうでしたか?


シカゴの和太鼓グループとコラボ
(田付さん)阿波踊りは真剣にやろうとするととても奥が深いですが、初心者にとってはとっつきやすいと思われたようです。音楽もぞめき以外に J-POP やブルースなども加えることで、色んな方々に楽しんでもらえたのかなと思います。

Japan Day ではコスプレのイベントもありましたので、コスプレイヤーの方々と一緒に踊ったりという事もありました。


現在の活動状況について


Q. 2015 年はどのように活動されましたか?(参加したお祭りや、練習内容について)


由緒ある競馬場で屋内で踊った初のグループに
(田付さん)Japan Dayでは、当日 2 度の大雨に見舞われ、折角練習を積み重ねてきた演舞の披露も中止になってしまいました。しかし、私たちの残念そうな姿を見ていた主催者が、同じく豪雨の為に一時屋内に避難していた競馬ファンの前で踊る事を許可してくれました。

実は、これは由緒正しいアーリントン競馬場としては異例のことだったそうなのですが、そのご厚意のおかげでとても多くの方々に踊りを見てもらうことができ、一緒に踊ることもできました。

その様子を多くのメディアの方々にも取り上げて頂き、その後は日系食料品店の夏祭りに呼んで頂いたり、シカゴで活躍する日本人ジャズミュージシャンの野毛洋子さんに御招待頂いて彼女の歌声に合わせて踊る機会を得たりしました。9 月にはレイバーデーのパレードにも参加し、その姿はテレビでも紹介されました。

Q. 現在、どのような方が参加されていますか?


練習の様子
(田付さん)元々はJapan Dayのエンターテイメントの為に設立された阿波踊りシカゴでしたが、Japan Dayの後もメンバーの皆さんの要望が高かったこともあり、美湖連というニックネームも決めてダンスグループとして継続する事が決まりました。

今はオフシーズンですので、毎月一回のレッスンには 20 名ほどの方々が集まっています。日本人とアメリカ人の比率は 7:3 程度かと思われます。

Q. 設立後 1 年振り返って、どのような点に苦労しましたか?逆にやって良かった点はありますか?


シカゴ大学で観客の皆さんと一緒に踊った
(田付さん)一番苦労したのは衣装の調達でした。当然アメリカでは何も入手できませんので、実家の母が所属している連の連長さんにご相談して古いお衣裳を無償で譲り受けたり、別の連の方に素敵なお着物をレンタルさせて頂いたりしました。

また、徳島市の姉妹都市がミシガン州のサギノーという街にあるのですが、私たちの活動をネットで知ったその街の職員さんが徳島市から進呈された衣裳を Japan Day の期間中レンタルして下さったりして、何とか踊り子さん達の分だけでも衣装を揃えることができました。そうした衣裳や団扇を日本から空輸する際には全日空さんや日本航空さんにご協力頂いたり、編み笠や備品の購入などには地元の人材斡旋会社の TOP さんがスポンサーになってくださいました。その他にも印刷会社さんや、デザイン会社さんなどありとあらゆる方々のご尽力で何とか成功に導くことができました。

Labor Day (労働者の日)のパレード
良かった点は、国際交流の一翼を担えたことかと思います。阿波踊りを通して色んな国の方々と交流をすることができました。よく、『政治的には対立している国同士でも文化交流を通じて仲良くしなくてはならない』というような事を耳にすることがありますが、実際この活動をするまではその意味が良く分かっていませんでしたが、一緒に踊り、笑い、大声で掛け声をかけあった時にその言葉の真意を感じたような気がしました。


今後の活動について


Q. 今後どのような活動をしていきたいですか?今後の目標あれば教えて下さい。


シカゴの色々な大学のキャンパスに招待された
(田付さん)ずっと踊り続けたいなと思います。その為には色々とクリアしていかなくてはならない事も多いと思いますが、少しづつシカゴでの認知度をあげていき、いつかはアメリカ中の阿波踊りグループがどこかに集まって踊りを披露するようなお祭りが出来たら素敵だなと思います。また、いつか日本にも遠征出来たらいいねとみんなで話をしています。


Q. 最後に日本の踊り子の皆さんに一言お願いします。


(田付さん)私たちの殆どは実際に日本で阿波踊りを観たことがありません。ですからいつもどこかで「なんか間違ってるんじゃないかな?」と思いながらも映像や資料を観ながら頑張っています。もしもシカゴにお越しになる機会がありましたら是非練習を覗いて、皆さんの踊りを教えてください。よろしくお願いいたします。

おわりに


阿波踊りシカゴ「美湖連」さんのお話はいかがでしたか?

筆者は美湖連が発足直後から美湖連の活動状況をWebサイトやFacebookで見守っていましたが、非常に活発な活動ぶりに驚かされました。初代代表の田付さんがイベント関係の仕事をされているとお聞きしたので、田付さんのご経験も連の活動に生かされていたんだなと納得がいきました。

本記事からも分かるように、踊りや音楽といった文化は国際交流や相互理解で非常に有効だと言えると思います。特に阿波踊りは初めて見る人にも分かりやすく、取っ付き易い点も良いのだと思います。今後も阿波踊りがシカゴの文化の一部として定着していくよう頑張っていただきたいと思います。

次回も北米の連を紹介予定です。お楽しみに。